2009年のオープン以来人気の、精進料理レストラン「Kajitsu」が運営するもう一つのレストラン「Kokage」。こちらのレストランは精進料理ではなく、お魚、お肉料理もあり、ランチスポットとして既に利用している人も多い。ゆっくりと落ち着いた雰囲気で美味しい料理とお酒を楽むことができる大人の酒どころがディナータイムのこかげ だ。
こかげのメニュー は 丁寧な一品料理と酒肴、麺物、 ごはんもの。前菜として一品料理や酒肴数品をお酒と楽しみ、締めの一品を頂く。一見ありきたりの注文の流れに見えるが、実際に体験してみると、こかげの上質な料理、ちょうどよいボリューム、お酒のセレクション、そして出過ぎないサービスに、今までのNYにあるようで実はなかった「究極の大人の癒しどころ」であることに気付くはずだ。
席についてまずオーダーしていただきたいのが、酒肴セット。鯖へしこ、豆腐よう 、からすみ、たらこ粕漬け、板わさなどから料理長が丁寧にその日によってお好みで選んでくれる。酒肴のお供には、やはり日本酒。もしくは、最初の一杯としてオススメの「天狗舞山廃純米の炒り番茶割り 梅干しぞえ」を。京都の日本茶専門店一保堂のお茶と日本酒のカクテルは、添えられた梅干しをまず一口、そして香ばしい炒り番茶の風味とまろやかな日本酒の口当りを感じてほしい。夏は冷、冬は温でぜひ試してほしい一品。とてもシンプルな組み合わせなのだが、他ではいただけない一杯だ。
一品料理は、本日のお造り、いぶりがっこと松の実が入った絶品ポテトサラダ 、香ばしさがたまらない炙りお揚げ 、お出汁がじゅわっと感じられる究極の出汁巻き玉子、 ジューシーなビーフカツレツ 等とメニューを一覧しただけで、どれも思わずオーダーしたくなる品ばかり。（料理長によって一品料理は毎月少しずつ変わっている。）京都で有名な生麩の名店「麸嘉」が母体のこかげでは、 もちろん生麩もメニューにあり。お料理はどれも美味しく、量より質だと実感しながら、一口一口ゆっくりと味わいながらいただく。
これらの一品料理たちに欠かせないのが日本酒。特に燗酒には力をいれており、お好みの温度、またはオススメの温度で燗をつけてくれる。 日本酒初心者の方でもわかりやすいようにと、 大吟醸系の香り豊かな高級酒タイプ、すっきりした淡麗辛口タイプ、旨口芳醇系のコクのあるタイプと、銘柄ではなく味の違いで日本酒を紹介。日本酒には興味があるがどう飲んでいいのか、どのお酒を頼めばいいのかわからないという人の多いニューヨークでは、お店側からの情報提供はとても嬉しいサービスだ。ニューヨークではこかげ、嘉日でしか取り扱っていない京都の蔵元「月の桂」の発泡純米酒「吃驚仰天（びっくりぎょうてん）」があり、カクテル感覚で日本酒を楽しみたいという人にもオススメだ。
一品料理の数々と日本酒でお腹が満たされてきたら最後の締めの料理へ。お蕎麦とうどんは手打ちで、ランチでも人気のメニュー。ご飯ものがご希望であれば 鯖寿司 、うにいくら丼などもあるが、締めの一品で 実は隠れた人気メニューなのは、なんといってもすっぽんのスープで作られた 「こかげらーめん」。一見控えめにメニューに掲載されているが、テーブルに運ばれてきた瞬間に器全体に広がるふわふわのかき卵の美しさに思わず目を見張る。また、一口スープを飲んだ瞬間に優しい味が体全体に染みわたり、1度食べた人は、ほぼ100％の確立でリピーターになると言う絶品ラーメンだ。
これらの料理を取り仕切るのが、料理長の大堂浩樹氏。日本では東京で３年、京都の名店で６年料理人としての腕を磨き、 和食の素晴らしさをニューヨークで紹介すべく2013年に渡米。日本で培ってきた経験と技術を生かして作り上げられる料理は、ニューヨークでも高い評価を得ている。和食のプロでありながらデザート作りも大好きという大堂氏。季節で変わるデザートもすべて彼のオリジナルメニューだ。
そして、ここでしか体験できない新しい日本酒の楽しみ方を是非デザートと共に。もちろん単品でも。ブルックリンのキングス・カウンティー・ディスティラリーから取り寄せたウィスキー樽で自家熟成させた辛口の剣菱は、芳醇でスモーキーなウィスキーの香りと相まって食後酒としても最高。その他にも、カカオと一緒に数ヶ月寝かせた剣菱「チョコレート酒」も面白い。冷や酒で、燗酒で、そして変わり種の自家熟成酒で。その日の気分に合わせて自由な日本酒でその夜を締めくくりたくなる、こかげは、美味しいものを知り尽くした遊び心のある大人の店なのだ。
賑やかで活気のあるお店もいいが、丁寧に作られたおいしい料理とお酒をゆっくり静かに楽しみたい人にはもってこいのお店である。
Kokage by Kajitsu
125 E 39th St New York, NY
(212) 228-4873
http://www.kokagenyc.com
