「Karazishi Botan」オーナー鐘ヶ江文浩

「Karazishi Botan」オーナー 鐘ヶ江文浩

日本のソウルフード、ラーメンを世界の桧舞台にあげたラーメン店、一風堂。2008年のアメリカ第1号店がマンハッタンのイーストビレッジにオープンしてから、アメリカのラーメンカルチャーが変わったと言っても過言ではない。

その一風堂で20年以上商品開発を担当してきた鐘ケ江文浩氏がこの度独立し、ブルックリンに自身のラーメン店「Karazishi Botan」をオープンすることに。彼が考える今までのラーメン、これからのラーメンとはどういうものなのか?Karazishi Botanとはどんなお店なのか?そんな疑問をきっかけに、話を聞かせてもらった。


ラーメンとの出会い

鐘ヶ江氏は福岡出身。飲食業界への入り口は、実はイタリアン。福岡のイタリアンレストランで2年間働いたあと、飲食業界から少し距離を置き他県で就職。その後福岡に戻った際に運命の出会いが彼を待ち構えていた。一風堂創業者、力の源ホールディングス 代表取締役会長兼 CEO河原成美氏との出会いだ。

お客様の顔が見えるところでラーメンを作りたいという鐘ケ江氏 / Karazishi Botan

河原氏率いる一風堂に入社後、まずは製麺を担当。その後、商品開発担当となり2001年の上海出店、 2008年のニューヨーク出店 に携わり、その後、香港、シドニー、韓国、ロンドン、パリ、シンガポールでも新店立ち上げで世界中をラーメンと共に飛び回った。

独立へ

鐘ヶ江氏が一風堂を退いた 2019年には、北米の店舗も増え、一風堂の人気、認知度は不動のものとなっていた。2017年には本社力の源ホールディングスは上場企業となり、世界進出の加速化に益々力が入るグローバル企業への躍進も続いていた。 会社の規模も大きくなり、それらに対応した味の基盤も構築され、商品開発者としての役割は果たせたのではないかと感じるようになった。

また、小回りがきく状況だからこそできる、創造力を生かした自分独自のラーメン作りということも考えるようになっていた。そんな折、いつか自らのお店を持ち、そのお店を見せると約束をしていた父親が他界。その約束を守れなかった事も鐘ヶ江氏が独立を決心した大きな要因だったのだ。

河原成美氏からの学び

独立をして、自らのお店を持つ事になった鐘ケ江氏だが、河原氏から学んだ事は多いという。具体的には?という問いかけに「常に創造力を働かせ新しい発想でラーメンと向き合うという姿勢ですね」と答えてくれた。ラーメンの常識にとらわれていては決して生まれることのなかったラーメンを、河原氏のもとで数えきれない程作ってきた彼だから言えることなのであろう。

ニューヨークラーメン市場の過去と未来

ニューヨークのラーメン市場を前線で 作り上げてきた鐘ケ江氏は、これまでは当たり前だが、日本の味を紹介するということが主流だった。ラーメン人気は急上昇し、需要は増加、ラーメン店も十分な程に急増した。

その結果やや飽和状態になりつつあるニューヨークのラーメン市場で、今後ラーメンの人気を持続させるためには、今丁度、変革が必要な時期にきていると強く感じている鐘ケ江氏。そして、それがまさに彼がこれからやろうとしている未来へ繋がる変革の一つなのだ。

Karazishi Botan

鐘ケ江氏が考えるこれからのラーメンを実際に食べることができるのが、ブルックリンのスミスストリートにオープンする「Karazishi Botan」。そこでどんなラーメンが生まれるのか?という質問に対し、その答えは、「アメリカのラーメンです!」と一言。

完成までに2年かかったという「Chef Special-Iron Men」

これからは、典型的な日本のラーメンの味、豚骨、醤油、味噌というカテゴリー分けされたラーメンではなく、新しい食材や味の組み合わせによる新しいスタイルのアメリカのラーメンがニューヨークで生まれ、それが今後世界に広がっていってほしいと語る鐘ケ江氏。

スパイスにまぶされたスペアリブ。このスパイスのもう一つの楽しみ方とは!?

ラーメン作りにおけるインスピレーションは、インターネットなどの情報に頼らず、自ら街中を歩く事だという 。日本にはない食材やスパイス、各国の人が住むニューヨークだからこそ食べることのできる世界中の料理。そこから得たヒントをうまく組み合わせ一杯のラーメンに仕上げられるのは、 今までの彼の経験と実績があるからこそなせる技であろう。

Karazishi Botan

2020年2月27日にオープンする「Karazishi Botan」。レンガの壁むき出しのニューヨークらしいこのお店。席数も18席と少ないがこの席数でないと、こだわりの一杯を提供することが難しいのだとか。

「ラーメンは無限大」とワクワク感に満ち溢れた鐘ケ江氏。今後一体どんなアメリカ生まれのラーメンがKarazishi Botanにお目見えするのか今から目が離せない。2020年は、ニューヨークの新しいラーメン時代の幕開けとなるであろう。

インタビュー Kazuko Nagao
https://www.instagram.com/kazuko_pecopeco/


Karazishi Botan
255 Smith Street, Brooklyn, NY 11231
347-763-1155
https://www.karazishibotan.com/