ニューヨークはアメリカの食文化の最先端を行く街。世界中から集まる人々の胃袋を満足させ、そして世界各国の料理が食べられる場所である。約2万件のレストランがひしめくニューヨークでは、毎日新しいレストランがオープンし、そして戦いに敗れ閉店するところも少なくはない。そんなレストラン激戦区で人気ステーキハウスを経営しているレストランオーナーがいる。彼の名は、ウィリアム・ディーグル。
ニューヨークで老舗ステーキハウス「アンクルジャックステーキハウス」のオーナーであり、ニューヨークで最もタフなボスとして知られるディーグル氏。フードネットワークのテレビ番組「Restaurant Stakeout」に出演し、その番組では、経営不振のレストランを裏柄から観察し、レストラン衰退に密接に繋がる従業員の悪態と経営不振の理由を掘り出し、どん底のレストランオーナーにレストラン再建のための的確なアドバイスをバシバシ与えていく。そんな彼に、ニューヨークでレストランを成功させる秘訣を聞いてみた。
1: WHAT、WHERE,WHY?の問いかけから始めろ!
レストランをオープンしたいと思う人は多い。コンセプト、ブランド、そしてレストランに対しての信念が固まっていないとレストランをオープンしても失敗してしまう。シンプルではあるが、このコンセプトWHAT/何を、WHEREどこで、WHYなぜオープンするのかをしっかり考えなくてはいけない。
うちのレストランにあてはめれば、「アンクルジャックというステーキハウスを。ミッドタウンで、美味しいお肉を最高のサービスと共に食べてもらうためにオープンする。というミッション」。とてもシンプルなことであるが、この3点が明確になって初めてレストランをオープンさせることを考えろ。
2:レストランをオープンしたいと思ったらまず第一にリサーチ!
ニューヨークでは、ヘルスデパートメントのルールや、ビジネスを行う上での法律が日々変化している。いろいろな申請を各政府機関に提出し、それが受理、承認されて始めて次の段階に進むことができる。まずはこれらの手続きについて、しっかり調べ、理解し、申請を進めていかなくてはいけない。
3:物件は、「Location! Location! Location!」
レストランの場所選びは特に慎重に!レストランの成功を大きく左右するのがロケーション。これだけの多くの人がニューヨークにいても、レストランの場所が悪ければ集客にはつながらない。それに加えて、必ずインテリアデザイナーを雇うこと。ニューヨークでは、空間の演出はとても大切。この部分にはお金をかけ、その道のプロにプロドュースしてもらうのがベスト。
4:スタッフトレーニングは徹底的に!
私は自分のレストランでのポジションを全て自分でこなしてきた。バーテンダー、サーバー、料理とすべて。レストランの全てのオペレーションを理解していなければ、レストランオーナーとしてはやっていけない。窓拭き、床掃除、電話の応対、接客における全てだ。まずは自分で仕事を理解し、それを徹底的に従業員にトレーニングする。自分がいなくても自分と同じことができる人間を育て上げなければならなり。また、従業員には仕事とは一生保証されたものではなく、他の人にわたる可能性もあるという危機感を持たせることも大切。注意された事に対して、何度も間違えを繰り返す社員は速攻に退いてもらう。
5:レストラン経営者としての確固たる姿勢を従業員にみせろ!
レストラン経営者として、リーダーとして常にスタッフのモチベーションをあげていかなければならない。社員のモチベーションを上げるため、私自信、自分のレストランに対する情熱を社員に示す。皆が潤える繁盛店になるため、売り上げを上げるために全力で仕事に打ち込み、その努力を惜しまないという姿勢を従業員に見せている。
6:人材確保には金をかける!
数年前まで、社員の雇用は自らが担当していた。ただ、ニューヨークでは労働法もいつも変わる。それらの変化は、事業主の責任で、ホームページなどの告知を追っていかなくてはならない。法律の変化を理解しておらず、知らず知らずのうちに労働法に違反していたとしても、従業員から訴えられたらこちらの責任となってしまう。なので、労働法に詳しい人事担当社を雇うことにした。給料を支払ってでも、法律に沿わなかったことで後から発生しかねない訴訟問題の賠償金を払うことを考えるとよっぽどスマートな選択だ。また、我々が最も重きを置くことは、お客様に対するサービス。なので、お客様と接するウエイトスタッフ選びは慎重に行っている。経験はもちろんのこと、人によいサービスを提供することが好きという人材を常に探しており、そういう人材が現在アンクルジャックで働いている。レストランはまさしくショーと同じ。今日のショーがよかったということは、明日は関係ない。明日がよくても明後日が悪ければ意味がないのだ。最高のショーを演じてくれるスタッフが本当に重要だ。
7:料理は安定性が命!食材選びに手を抜くな!
ステーキハウスでは肉が命。アンクルジャックでは、創業以来、週に2回今でも自分とエグゼクティブシェフが肉屋に足を運び、品定めをしている。選んだ肉を切ってもらい、状態を確認する。納得のいく商品であれば、その場でアンクルジャックステーキハウスの「UJS」の焼印を押し特設の箱に入れ、お店に配達をしてもらう。配達後は、各店舗にある完璧な湿度を保ってくれる肉の熟成室で肉を熟成させる。ドライエイジしたあと、その日お店で提供するだけのお肉を各店舗でそれぞれカットする。他店ではバターをつけて焼くお店もあるが、しっかり肉の味を味わってもらうため肉の味付けは塩コショウのみ。1800度の高温で焼いてお肉の旨みを中に閉じ込め、そこからお客様の好みの焼き加減に仕上げていく。最高のお肉を常に提供し続けていることがレストランの人気の大きな要因と自負している。
インタビューの最後に、「成功の裏には、数知れない失敗が存在している」と語るディーグル氏。それらの失敗を乗り越えるだけのビジネスに対する情熱と、忍耐力もニューヨークでレストランを経営するには必要不可欠な要素なのだ。
Uncle Jack’s Steakhouse
440 Ninth Avenue, New York, NY 10001
Phone: 212-244-0005
http://www.unclejacks.com