ニューヨークのブルックリン区は、常に新しい何かが誕生する場所。その中のグリーンポイントというエリアは、ウィリアムズバーグの北側、クィーンズのロングアイランドシティーとの境目に位置し、昔からポーランド人系アメリカ人のコミュニティーエリアとして知られている。古い商店街と住宅街というイメージだが、最近ではこのエリアにも次々を新しいお店が登場している。そのグリーンポイントに、この度、日本人オーナーシェフが経営するフレンチレストラン「YUU」がオープンする。
レストランに入ると一番に目に飛び込んでくるのが、ずらりと並ぶ18席のカウンター席。フレンチレストランといえば重厚で大きなダイニングテーブルを思い浮かべるが、同店ではこのカウンター席のみ。そしてその向かい側には、シェフ達の舞台とも言える、オープンキッチンが広がる。そこで創り出される料理は、アラカルトなしのコース料理として提供され、6時一斉にサービスが開始される。
料金は$250 (税、チップ別)、デザートを含め全部で22品。最後のプティフールは、窓際のローテーブル、ソファーがおいてあるエリアに移動してからサーブされ、ゆっくりと食事の締めくくりを楽しんでもらうという演出。ドリンクメニューは、ビール、ワイン、シャンパン、日本酒、ウィスキーと取り揃えており、ペアリングメニューも充実している。
「このレストランは、ミシュランの3つ星を目指しています。」と語るのは、「YUU」のシェフオーナーの島野雄氏。色々な困難に立ち向かいながら、1から自分の力でレストランをオープンする島野氏とはいったいどんな経歴の持ち主なのか。
島野氏は、地元兵庫の高校を卒業し辻󠄀調理師専門学校でフランス料理を学ぶ。そこから厳しい選考を経てフランス校へ留学。現地でも、レベルの高いレストランをインターンシップ先にしてもらえるように、全力投球で望み、その結果ミシュラン2つ星のレストランでの研修するチャンスを得た。
卒業後日本に戻り、神戸のポートピアホテルで3年働き、フランス料理のみならず、ホテル内で提供される様々な料理の部署で働き経験を積んだ。ホテルから次なるステップアップと、東京の有名フランス料理レストランで2年半働く。その当時、高校を卒業後ずっと飲食の道をまっしぐらに駆け抜けてきたが、料理から離れようかとも考えた時期もあった。そんな時先輩から、今までの経験があれば学生時代とは違い、もっと大きな舞台で活躍できるのではないかとアドバイスを受け、ワーキングホリデーを利用しフランスへ飛びたちミシュラン1つ星レストラン「Villa Augusta」で働く。
その後知人から紹介されたレストラン「Chamarré Montmartre」の門を叩き、料理の腕一本で仕事を獲得。就労ビザも獲得し本腰を入れたフランス生活が始まった。そこでの実力が認められ、ついにフランスでミシュラン3つ星レストランの「Guy Savoy」で、フレンチレストランで最も重要かつ花形のポジション、ソース&肉への火入れ担当を任されることとなった。
フランスに来た当初から、自らのレストランをフランスでオープンしミシュランの星を獲得するという事を目標に邁進していた毎日だったが、アメリカに行く機会があり、レストラン業界の人と交流を深める中で、アメリカという選択肢も考えるようになったとういう。
8年間のフランスでの多忙な毎日で忘れかけていた彼のチャレンジ精神と行動力が蘇り、新天地アメリカを目指すことに。
2017年ニューヨークのミッドタウンにオープンした「MIFUNE」レストランのエグゼクティブシェフとして赴任。フランス料理に加え、彼なりのオリジナリティーを踏まえた和食も提供してきた。
そんな中全世界を揺るがしたパンデミック。今までの料理人人生を振り返り又将来を見据え、フランスでも日本でもなく、ここニューヨーク、ブルックリンで自らのレストランをオープンすることを決意。2021年からその準備を開始した。
ミシュランの星獲得のみならず、島野氏が掲げるもう一つのミッションは、子供達が将来なりたい職業ランキングトップを「シェフ」にしたいというもの。シェフの社会的地位の向上にも注力しながら自らが模範となり、シェフという職業には夢があるということを実証していきたいと語る。
日本ではなく、海外という舞台で常に挑戦し続けた島野氏の努力と経験、そして行動力があったからこ、会社設立、資金調達、物件選び、人材確保と様々な困難に直面しながらも今回のオープンを迎えることができたと言っても過言ではない。
また、島野氏を支える創業メンバーも、各人が自らのミッションを持ちながらチーム一丸となり最高のレストラン作りに注力している。
エグゼクティブシェフの古川修士氏は、フランス料理の経験もあり、ニューヨークの飲食業界でも10年間ニューヨーカーに料理を提供してきた。島野氏のクラッシックなフランス料理がベースではあるが、ニューヨークの市場にあった料理も視野に入れつつ、厨房を引っ張っていく。
ペーストリーエグゼクティブシェフの髙橋壮幹氏は、今回日本から参戦。ニューヨークに来て間もないが、ニューヨークでの食材と向かい合いながら、メニュー開発に余念がない。彼のデザートのコンセプトは、フランス料理とのバランスを考え重くなりすぎない、尚且つ旬の食材を生かしたデザート。どんなメニューが出てくるのか楽しみだ。
ワインソムリエの松本昭生氏曰く、「お酒は料理ありき」。両シェフが作り出す料理を最高引き立て、尚且つお料理にあうラインナップを提供してくれる。
サービスマネージャーのヘンリー氏は、お客様が「YUU」に来てよかったと思ってもらえるような料理に負けない最高のおもてなしでお客様をお迎えすることが自分のミッションだと語る。
「YUU」待望のグランドオープンは島野氏の誕生日の5月19日金曜日。定休日は日曜日と月曜日。ブルックリンのグリーンポイントで産声を上げる日本人シェフによるクラッシックなフレンチレストラン。2023年話題のレストランになるだろう。
YUU
55 Nassau Ave #1A Brooklyn NY 11222
https://www.instagram.com/restaurant_yuunyc/