日本でラーメンの相棒といえば餃子。アメリカでこの餃子の立ち位置にいる一品をご存知だろうか?それは「バンズ」と呼ばれる、中華パオ。中割れした蒸しパンに、肉や野菜を挟んだもの。ラーメンの前菜として定番化している一品だ。
今では多くのラーメン店で食べることのできるバンズだが、その広がりの根元は、一風堂の人気メニュー「平田バンズ」(現在ではIPPUDO Bunsという名称)と言っても過言ではないだろう。人気店の人気メニューに倣えと、多くのラーメン店がバンズを提供するようになった。
そしてこの度、そのバンズ同様、今後アメリカのラーメン店で定番化するであろう一品が、ブルックリンのKarazishi Botanで誕生した。そのクリエーターは、一風堂で20年以上商品開発を担当してきたKarazishi Botanオーナーシェフの鐘ケ江文浩氏である。
この一品とは、「坦々飯」。デビューは、記念すべきKarazishi Botan オープン1周年の2021年2月27日。このタイミングには、とても運命的なものを感じる。なぜなら、昨年お店をオープンして2週間で、新型コロナ感染拡大でニューヨークの飲食店がテイクアウト、デリバリーのみの営業を強いられ、非常に厳しい1年をなんとか乗り越え、その節目の日にこの一品がお客様のテーブルに運ばれたからだ。
坦々飯は、ラーメン丼ぶりに白米、ねぎ、メンマ、ソイミート焼肉(大豆ミートの焼肉風)、山菜がのっており、それに南部鉄の土瓶に入ったポルチーニマッシュルームベースの担々麺スープをかけたもの。それにトッピングをのせていただくのだが、味の変化も楽しめ、最後まで飽きずに食べることができる。お好みのトッピングを追加することも可能。現在、週末のブランチメニューとして提供している。
この商品の誕生について鐘ケ江氏に聞いたところ、「実はスープとご飯の組み合わせは新しいアイデアではなく、1年前のオープン当初、坦々麺の残り汁にご飯を混ぜて食べると美味しいので、つけ合わせメニューとしてご飯を出していたんですよ。でもあまりお客様に受け入れられなかったんですよね。」それと同時に新型コロナウィルス感染拡大で飲食店はテイクアウトとデリバリーのみになり、一旦そのメニューは止めることにした。
しかし、この1年のコロナ禍でメニューの見直しを行いながら、お客様からの声をしっかり聞くように努めた。グルテンを含む小麦でできた麺を好まないお客様から、ラーメン屋に来ているにもかかわらず、スープとトッピングのみの麺抜きオーダーが入っていることにも気づいた。ならば、麺の代わりに、ご飯を入れてはどうかと考えるようになり、オープン当初は受け入れられなかった坦々麺の汁にご飯を入れるという一品をもう少し改良を加えて、新たなメニューにしてはどうかと思いついたのだ。
白米、ラーメンのトッピング、ラーメンのスープで作ることが可能なメニューは、小麦粉が食べられない、もしくは麺よりもご飯を好むというお客様を持つ他のラーメン店にとっても、まさに革新的な逸品になることは間違いない。
とはいえ、ただ材料を混ぜさえすれば良いわけではない。お客様に感動を与えるには、味のバランスがとても重要だ。Karazishi Botanの坦々飯は、味のバランス、トッピングとの相性が絶妙で、シンプルなようだが、鐘ケ江氏によって考え抜かれた組み合わせだと食べれば食べるほど実感できる。ビーガンメニューだが、ビーガンでない人が食べても間違いなく感じるであろう満足感はまさに匠の技だ。
「ビーガンメニューにも力を入れているので、まずはこの坦々飯から始めましたが、もうすでに他のフレーバーも考えています」と語る鐘ケ江氏。お茶漬けのようでもあり、ご飯にスープが馴染んでいくと、リゾットのようでもあり、今までありそうでなかったたこのメニュー。鐘ケ江氏の偉大なる創造力が、アメリカラーメン界に新たなトレンドを作ること間違いなしだ。
Karazishi Botan
255 Smith Street, Brooklyn, NY 11231
347-763-1155
https://www.karazishibotan.com/