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独立記念日2010
ネーサンズ・ホットドッグ・イーティングコンテストとフードファイター小林尊さん逮捕

7月4日はアメリカ独立記念日。ニューヨークの独立記念日といえば、メイシーズの花火大会とブルックリンのコーニー・アイランドで開催されるネーサンズ・ホットドッグの大食い大会!今年も、30度を超える真夏日の中、10分間の暑い戦いを観戦しようと大勢の人がコニー・アイランドに集まった。

そして最も注目されていた点は、ジョーイー・チェストナッツ氏の新記録ではなく、フードファイター小林尊氏の大会不参加について。大会の数日前から米系メディアでは、小林さんの不参加が報道。その理由は、大会主催者側との契約がまとまらなかったからとのこと。この契約がまとまらなかっとはいったいどういう事なのだろうか?

実はこの大会には、ホットドッグメーカーであるネイサンズと共に大会を運営している団体がいる。それが、「Major League Eating & International Federation of Competitive Eating (以下、MLE & IFOCE)」という団体。この団体のルールブックに沿って参加選手はこのホットドッグ大食い大会に出場する。逆に言えば、この団体の許可を得る事ができなければ、参加は不可能となる。また、この大会に出場するために、同団体に属す事も条件の一つ。結果として、この団体に所属することによって様々な制約が出てくることとなる。その内、最も大きな制約として、他の団体が主催する大食い大会への出場が禁止されている。そのため、この制約に縛られないようにと、同大会への参加を辞めた人や、参加を躊躇する選手も沢山いるのだ。

大食いをこよなく愛する小林氏は、彼のブログによると、アメリカで様々な大食い大会に出るチャンスを得るためにO-1ビザを取得し米国長期滞在ができるステータスを取得したそうだ。しかし、この団体に属した場合、他の大食い大会等への出場ができなくなり、本来の目的が果たせなくなってしまうだろう。また、業界での認知度の高い小林氏ということもあり、団体側も様々な制約を追加として課したとも推測される。

結局、大会開催の寸前まで小林氏が出場するか否かが分からないまま、(小林さんのブログには出場できないと明記されていない状態)大会が開始された。出場選手のネームプレートが置いてあるコンテストが行なわれるテーブルには小林さんの名前はなかった。

このコンテストは「ESPN」という米国のスポーツチャンネルにて 正午からの1時間枠で放送された。司会のジョージ・シー氏のエキサイティングなアナウンスのもと、選手の入場。この日決勝に望んだ16名の選手がステージにあがり、大会の開始が迫っていたその時、ステージ横に設置された大きなスクリーンになんと、観客の中にいる小林氏が写しだされた。今大会に出場しない小林氏は会場に来ていたのだ。彼の表情は険しく、自分が立っているべきステージを観客席から眺める悔しささえその表情から感じられた。

カウントダウンとともに、10分の大食い大会が開始。予想通り、昨年優勝のジョーイー・チェストナッツ氏が独走し、54個のホットドックを食べ上げ、2位と9個差をつけて優勝。しかし、昨年の68個という記録を大幅に下回り、同年の小林氏の準優勝記録、64個半も大幅に下回る結果に…。イベント自体も昨年のイベントで両氏の間に見られたような接戦もなく、盛り上がりにかける大会となった。

試合終了後、 興奮冷めやらぬ選手が余韻を楽しむ間、観客の中にいた小林氏は、おもむろにバックステージに移動。突然、サブメインステージに上がり観客に向かい訴えかけ始めた。突然のハプニングに驚いた警官と大会関係者数名がかけより、柵にしがみついてステージ上に残ろうとする抵抗する同氏を力づくで連行、その場で公務執行妨害を理由に逮捕するという事態となった。

米系のメディアでは、「チェストナッツ氏に祝福の声をかけにいこうとした」また、「チェストナッツ氏を攻撃しようとした」などと書かれているものもありました。しかし、彼がステージに立ってアピールしたかったことは、「小林はここにいる!本当はこの大会に出たかった!」という事だったのではないだろうか?

当事者からの説明のない現時点では、事実の詳細がわからない。

しかし、小林氏の存在が、この大食い大会が現在の人気を確立できた一大要因であるというのは周知の事実。その彼の貢献を汲み取って、主催者側が歩み寄れないのには疑問を抱かずにはいられない。

以前小林氏とも肩を並べて同大会に出場した経歴があるベテラン選手(元MLE & IFOCE登録選手)、ドン・ラーマン氏はこの事態についてPECOPECO!にこう語ってくれた。「運営側はこの大会を長年に渡って盛り上げてきたベテラン参加選手に対する尊敬のかけらもない。今回のコバヤシの件も本当に残念でならない。この団体はホットドッグ大会の間際になって契約するかしないかと突きつけてくる。これが彼らのやり方さ。」

また、同じく元MLE & IFOCEの登録選手で、昨年のゴーゴーカレー・イーティング・チャンピオンシップで優勝したジョセフ・メンチェッティ氏もこう語る。「コバヤシは大食い大会のベイブ・ルース。ただのスポーツ選手ではないカリスマ的存在。彼はもっとまともな扱いを受けるべきだ!」

契約の国、アメリカ。ドライなビジネスはスポーツ業界でも同じこと。野球界においても、あれだけ活躍し、MVPまでとった松井秀喜選手でさえも、ニューヨークヤンキースへの残留はなく、ロサンゼルス・エンジェルスへの移籍となった。ファンや選手の希望とマネージメント側の方針にずれがあるのは当たり前のこと。スポーツ選手も限られた選手生命を意識しながら、与えられたオプションの中で方向性を決めていかざるを得ない。「自由の国アメリカ」で、小林さんの大食いに対する情熱と才能が、今後よりよい形で発揮できる場所が増える事を祈りたい。





(左)警備員に連れて行かれる小林選手。(右)「Free Kobi(小林に自由を与えろ)」のメッセージが書かれたTシャツ。





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試合の様子を見守る小林選手

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イベントを象徴する巨大スコアボードには、数年にわたって王者を守り続けた小林選手の写真がライバルのチェストナッツ選手の写真と共に中央に大きく載せられている。