「ふわふわ」、「プリプリ」、「サクサク」。言葉を聴いただけで食欲をそそられるのは、本当に不思議だ。こうやって記事を書いている最中にも、お腹が鳴りだしそうになる。私たちにとって、味や香りだけでなく、食感や歯ごたえなどもおいしさの決め手。人にその料理の良さを伝える時、言葉を使って精一杯表現しようとするのは私だけではないはず。言い回しのバリエーションが豊富な日本語に感謝しなくては…
「プチプチ」。
この表現にふさわしい一品を今回はご紹介。
16年間、地元ニューヨーカーを唸らせてきたBASTA PASTA。客の7割がリピーターということから、その人気の高さが伺える。常連客が何度足を運んでも、どうしても頼んでしまう一品。それが、"Spaghetti con Uova di Pesce"、トビコとシソのスパゲッティーだ。このスパゲティー、ニューヨークのパスタ料理には珍しく、バジルを使う代わりにシソを使用し、日本風にアレンジを加えてある。スパゲティーを口にする前から湯気と共にほのかに懐かしいシソの香りが漂う。また、贅沢にトビコが盛られているのも見逃せない。どの一口にもスパゲティと程よく絡み、プチプチした食感を楽しませ続けてくれる。
スパゲティーを味わっている内に1つのことに気がつく。それは、麺から感じられるほのかなうまみ。実はこのスバゲティー、調理の過程でムール貝のダジ汁を使用している。この繊細な味への気配りは、そこらのパスタ料理では味わえない。
ほんのり甘く、味わい深いソース、プチプチとしたトビコの食感と口の中に広がる芳醇な磯の香り、そして薬味のシソが一体となり、非の打ち様のない美味しさを作り出している。しかも、ただ美味しいだけでなく、私たち日本人をどこかホッとさせる風味がそこにはある。常連客がとりこになるのも全く不思議ではない。こんもり盛られたトビコを最後の1粒まで食べ尽くさなくては気の済まない程の1品だ。 (町田ミルス)
ドサッと山盛りのシソは、トビコの美味しさを引き立てる。