アメリカ合衆国で最も古い地域ニューイングランド地方は、新鮮な魚介が手に入ることから魚介類を中心とする料理が多い。アメリカを代表する二枚貝のスープ、クラムチャウダーもこの地方で発祥した。白いクリームスープ仕立てのニューイングランド・クラムチャウダーは、ニューヨークでも人気メニューの一つ。
鉄鍋に入ったスープ。ふたを開けると、ふわっと湯気がたつ。スープを一口ふくむと、ガーリックの香ばしさが一瞬にして口の中に広がる。そして、バターとミルクが織り成す濃厚なクリーミーな味に思わず微笑がもれる。コクがあるのに、さらっとしているスープとセロリやポテトのサクサクした食感が同時に楽しめることにも驚かされる。/p>
このクラムチャウダーの美味しさの秘訣は、シェフの言う、"Simplicity is difficult"に隠されている。簡単なレシピで勝負するには、素材が味の決め手となる。野菜は、薬品を使わずに栽培したものを使用。業務用ですでに細かく切られたものは一切使用せず、皮むきから行う。貝も実も大きいニューイングラン地方産を使用している。そして、素材の味を引き出す隠し味が二つ。ガーリックとマティーニの一種のVermouthだ。これが素朴なスープの味を奥行きのある深い大人の味に仕上げている。
どこか懐かしさを覚えるシンプルなスープ。シンプルだからこそ、素材のうま味がスープ全体に行き渡り、素晴らしいハーモニーになっている。寒い冬、体の芯から暖めてくれる優しいスープを是非味わってほしい。