アッパー・イースト・サイドにある寿司とアジア創作料理のレストラン「芸者」。連日満席でニューヨーカーから高い支持を得ている。その店のAccompaniments(付け合わせ)メニューに、絶品の「Wagyu Fried Rice(和牛の焼き飯)」が潜んでいる。
この一品が生まれたきっかけは、メニューに高級和牛が加わったこと。前菜に3オンスの和牛を使うメニューがあり、脂を除いた肉の部分のみを提供しているので、必ずそぎ落とさなくてはいけない脂の部分が出てくる。「脂とはいえ、捨てるにはもったいないこの高級な食材を無駄なく使う方法はないか?」とエグゼクティブ・シェフのリチャード・リー氏は頭をひねっていた。
脂の風味がよい事に目をつけ、キッチンスタッフの食事にこの脂を使った焼き飯を作ったところ、驚くほどの旨さだった。ある日、和牛のステーキをオーダーした客にサービスでこの焼き飯を出したところ、大絶賛を浴び、メニューに加える事になったのだ。
作り方は至って簡単。脂をフライパンで熱し、そこにガーリックを炒め、脂にガーリックの風味がついたら、醤油とみりんを入れる。煮詰まったところにご飯を入れる。最後にかりかりに炒めた和牛の脂を混ぜ、ネギのみじん切りを薬味で上にのせて出来上がりだ。
口に入れた瞬間、 和牛の芳醇な味が口の中に広がる。醤油とガーリックの香ばしい味が食欲をそそり、どんどん箸が進む。霜降り和牛の美味しさの要因の一つは良質の脂。それを使った焼き飯なのだから美味しくないはずがない。
あまりの人気のため、肉についている脂を使っているだけでは間に合わなくなり、この一品のために高級和牛の脂だけを仕入れるようになった。一度食べると病み付きになる味だ。
ご飯と絶妙に混じり合った醤油、ガーリック、そして肉の風味が口の中で広がる。