ミッドタウン・イーストの閑静な住宅街、マレーヒルにあるブティックホテル「ザ･キタノニューヨーク」。1973年のオープン以来、日本人客のみならず、全世界からニューヨークを訪れる人々に一流のサービスを提供していることで定評のあるホテル。

このホテルのロビーを抜けて地下におりると、懐石料理をメインとした本格和食レストラン「白梅」があるのをご存知だろうか？懐石料理の他にもお寿司や一品料理を豊富に用意し、宿泊客やニューヨーカーをもてなしている。今回ご紹介するのは、その中の一品、某有名野球選手も好んでよく食べるという一品「かつ重」だ。

オープン当時は懐石料理のみを提供していたが、その1年後にはお客様のニーズに合わせて料理にバラエティーを持たせるため、一品料理やお寿司もメニューに並ぶようになった。そして、ルームサービスとして、また1人でさっと食事を済ませたいというお客様のために「お重もの」がメニューに加わり、その中でも「かつ重」は、不動の人気を誇っている。

お重に入って運ばれてくる「かつ重」。ふたを取った瞬間に、ふわっと湯気が立ち昇る。それと同時にお重から飛び出してくるかのように、なんとも良いダシの香りが漂う。お重の中を覗き込むと、そこには黄金色をした半熟卵がキラキラと光っている。その下に見え隠れする肉厚のトンカツに、ついつい心を奪われてしまう。

卵は卵黄が濃厚な地鶏の卵を、豚肉は黒豚バークシャーを使用。肉を柔らかくする為に、下ごしらえの段階で肉を叩いてのばし、それをまた元の大きさに戻して厚みを出す。ご飯は品質が安定している最高級「きらめき」を使用。そして、決めてのダシは最高級の鰹節でとった一番だしを贅沢に使用している。このひとつひとつの過程に対するこだわりが、最高の味の秘訣なのだ。

食べた瞬間に広がるダシの風味と三つ葉のアクセント。ジューシーなカツとそれを包み込む柔らかい卵。ニューヨークにいることをふっと忘れさせる、日本にいるかのような幻想に浸れる一品だ。