旭川に1988年3月にオープンしたラーメン店「山頭火」の支店がニュージャージーの日系スーパー「MITSUWA」の中にある。
オープンして数年経ち、マンハッタンで過激なラーメン戦争が繰り広げられる今も、ニューヨーク在住の日本人からラーメンのうまい店として山頭火の名前があがる。週末になるとこの店の味を求めて列ができるのは当たり前だ。店舗のスタイルはレストランではなく、典型的な日本のショッピングセンターのフードコートと同様、カウンターでお金を払い、番号札をもらうというシステム。最初は塩味だけでスタートした山頭火だが、今では辛味噌、醤油などバラエティー豊かなメニューを展開している。
今回ご紹介するのは、やはり定番の塩味、そして山頭火のオリジナルメニューである「特選とろ肉ラーメン」。この一品はラーメンには珍しく、全ての具材が別皿に盛りつけられて登場する。自分の箸で好きなようにラーメンに盛りつけて頂く。
「塩ラーメン」というと、あっさりとした札幌ラーメンを想像しがちだが、この店の看板である旭川ラーメンは、トンコツでスープをとるのがスタンダード。九州の濃厚なトンコツスープとは異なり、後味がさっぱりしているのがその特徴だ。この店の白湯スープはあっさりしていながらも飲み応えのある味に仕上がっている。最後の一滴まで飲み干して楽しむ通も多い。また、この豚骨でありながらも比較的さっぱりしたスープの味わいが、脂身の乗ったジューシーでとろけるようなチャーシューとうまくバランスが取れているのも魅力の一つだ。
さらに、スープにしっかりと絡みつく中細の縮れ麺を使用しているので、一口ごとにバランスよくラーメンとスープを頂くことができる。素材の食感が生かされたメンマやキクラゲは、単調になりがちなラーメンに程よいアクセントを与えている。それでいながら主役である麺とスープを邪魔しないサイズと味付けに気を配っている。さりげなく用意された小梅の酸味は濃厚なラーメンを頂く間の程よい箸休めとなっている。
各素材の味、食感、バランスへの細かい気配りが、未だに続く人気の秘密だ。日本で頂くこだわりのラーメンに引けを取らない一品。マンハッタンから少し足を伸ばしてでも一度は試してみたい。