ムール貝の旨い店はニューヨークには何店舗もある。しかしFlex Mussleのムール貝の群を抜いて魅力的だ。
まず、そのフレーバーの種類に驚かされる。その数なんと23種類。「Italiano/イタリアーノ」、「Geisha/ゲイシャ」、といったメニューのネーミングはそれぞれの味の特徴に由来する。普通のフレンチビストロやシーフード専門店などでは頂けないようなユニークなフレーバーがメニューに並ぶ。ムール貝好きならば、色々なフレーバーを試すために何度もこの店を訪れること間違いなしだ。 23種類のメニューの一番下、値段設定が「MP(マーケットプライス/時価の略)」となっている「The Number 23/ナンバー23」は日替わりのフレーバー。こんな謎めいたメニューにも興味を抱かずにはいられない。
この店の一番人気は「Thai/タイ」。コリアンダーとココナッツカレーの風味がしっかりと貝にしみ込み、噛むごとに貝のエキスと一緒になって口の中に溢れだす。そのジューシーさが堪らない。ガーリック、レモングラスやジンジャーといった様々な風味が所々に顔を出す。添え付けのライムをしぼって爽快感をプラスするのもイイ。ふと気がつくと、無言でムール貝にカブリつく自分がいる。
もう一つ、この店のムール貝のメニューの特徴は、P.E.I Musselsを使用している事だ。「P.E.I.」とは「赤毛のアン」で有名なカナダのプリンス・エドワード・アイランドの略。この島のムール貝は柔らかく弾力があり、中ぐらいのサイズ。ミネラルとプロテインが豊富で脂肪とコレステロールが低く、高級ブランドとしてよく知られている。また、年中クオリティーとサイズが安定しているというのもこのムール貝の魅力だ。
実はこのニューヨーク店は2店舗目。1号店はプリンス・エドワード・アイランドにある1976年にオープンした老舗レストランだ。産地のネットワークもしっかり確立し、常に最高の貝を入手する事ができるのだ。
夏になると、美味しいシーフードは食べられないというのはもう過去の話。交通の発達で、運送方法にしっかりと気を使っていればフレッシュなシーフードが年中頂ける。Flex Musselsでは、「あれ、サイズが小さい?」といった期待はずれのムール貝に出会うことはまずないだろう。季節にとらわれず、常に来客者の満足いく一品を提供する。
「当店が選りすぐったビールやキリッと冷えた『La Caravelle/ラ・カラベル」』のドライなシャンパーニュと頂くのがお勧めです。」とオーナーのラウラさんからアドバイスを頂いた。ムール貝とスープの香り漂う小鍋を抱きかかえて、お酒をクイっとやる…ああ、なんとも言いがたい至福の時に違いない。