騒がしい中華街を抜け少し裏路地に入ると、ひっそりとオシャレなお店が表れる。店先にはテラス席があり、中に入ると甘い匂いがする。小さな店内にはカウンター席が3席ほどあり、かわいいピンクのコスチュームを着た店員が迎えてくれる。ピンクが基調とされている店内の壁には写真や手紙などが貼付けられている。ショーケースの中にはカップケーキ、ドーナツ、クッキー、マフィン、ブラウニーとアメリカンなスイーツ。
このお店の売りはオーガニック•ベジタリアン。そしてグルテン(小麦粉)•卵•砂糖•乳製品•大豆が入っていないアレルギーフリーのケーキを置いているところだ。オーナーのエリンが小麦粉と乳製品のアレルギーというところから、もっと同じようにアレルギーを持った人にも食べてもらいたいという想いが店のオープンに繋がった。中でも通常ケーキに使用されるグルテンはタンパク質の一種で生地の弾力性やモチモチ感を出すのに必須の材料だが、これを使用せずにふんわりとしたデザートの味わいを保つのに何度も試行錯誤したという。キッチンではアレルギー対策を徹底的に行うため、作業場や使う道具も分けているそうだ。
その中から今回紹介するのは一番人気のストロベリーカップケーキ 。持つとずっしりと重みがある。しっかりとした生地の上にはとろっとクリーム。通常アメリカのカップケーキというと固くて甘い砂糖のフロストが乗っているイメージがあるが、ここのフロストはひと味違う。生地もクリームもアメリカのスイーツらしからぬ優しい甘さで、クリームの中には本物のいちごが入っている。このカップケーキにはスペルト小麦が使用されており、普通小麦より栄養価が高く、粉自体にナッツのような風味がありとても美味しい。またこのスペルト小麦は普通小麦のとは遺伝子が大きく違うため、小麦アレルギーを持っている人でもスペルト小麦にはアレルギーが発症しにくいことで注目されている。また砂糖の代わりにはサボテンからとれるシロップを使用し、卵はフルーツピューレ、カップケーキの目玉ともいえるフロスティング のクリームにはココナッツミルクを使用している。サボテンのシロップは砂糖よりも繊細な甘さで、日本人にも食べやすく、また糖尿病の人も安心して食べられる。
2006年にnewyork magazineのbest of newyork food, cupcake部門に選ばれたことで有名になったが、最近もべジタリアンであるアンハサウェイのウエディングケーキをこのbabycakesが作ったと life style magazineでも取り上げられるなど、話題のお店だ。
アメリカで暮らす中で小麦粉や乳製品アレルギーの人がケーキを食べるのはとても難しい。あるアレルギーの子を持つ親子が来店し、子どもが嬉しそうにショウケースからケーキを選ぶ姿に母親が涙したというエピソードもある。そんなアレルギーを持つ人々にとっては夢のような店だ。オーナーの優しさが詰まった味をぜひ試していただきたい。
Text: Kimi Tsuchiya