時間に毎日追われているニューヨーカーには、ファーストフードの様な手頃で美味しい軽食が欠かせない。移民が多く文化的に多様なニューヨークで、最も人気を博しているエスニックファーストフードと言えば、バインミーだ。簡単に言えば、バインミーとはベトナムスタイルのサンドイッチ。ベトナムが元々フランスの植民地だったことに影響を受けて、フランスパンにパクチー、大根、ハム、魚醤(ヌックマム)などを挟んだ料理だ。まさに東洋と西洋が融合した独特の食べ物だ。
イーストビレッジは日系のお店が多くて有名だが、少し離れればエスニックなお店も沢山ある。そこにニューヨークで一番おいしいと言われるバインミーの名店、「Banh Mi Zon」がある。当店一番人気のZon Sandwichesは、値段もお手頃で店長も一押しの一品だ。他にも、ベジタリアン、サーディン、グリルドチキン、ポークなど、トッピングのバラエティーを豊富に取り揃える。基本的にはテイクアウト用にオーダーをするのだが、内装もかわいらしく装飾されており、バーカウンターとテーブルもあるので、オーダー後に店内で食するのもいいだろう。
この店のZon Sandwichesで注目するべきは端から端までぎっしりつまった具材。バゲットの上の部分にはレバーペーストがたっぷり塗ってあり、2種類のハムと魚醤(ヌックマム)で旨味を引き出している。それに加え、野菜もたっぷり。大根、人参、キュウリ、パクチーなど、新鮮でシャキシャキの歯ごたえは他の具材との良いアクセントとなっている。日本人が苦手とするパクチーも口にしてみると気にならず、むしろハーブ独特の香りと、塩辛い魚醤と相性抜群。芳醇な香りとコクが口の中で広がる。
もう一点、Banh Mi Zonの旨さの秘訣は、バゲットにある。米粉で作られたバゲットの表面は薄く、クリスピーな食感。パリっとした皮の中はフワフワ柔らかく、とても軽くて食べやすい。この二つの食感が、全く飽きを感じさせないバケットにしている。
洗練されたエスニックファーストフード、バインミーを片手に都会の雑踏を遊歩する…といった一日も楽しいのではないだろうか。
(Text: Kayoko Hashimoto)