2008年の1月8日、リンカーンセンターの向かいにニューヨークのフランス料理会の巨匠、ダニエル・ブリュー氏が、「バー・ブリュー」をオープンした。この店は彼の経営するレストラングループの中でもっともカジュアルなレストラン。ワインと料理を最高のコンビネーションで気取らずに味わえるビストロスタイルのレストランを開きたいというダニエル氏の長年の構想が実現したのだ。
「ワイン」へのこだわりは、レストランに入った瞬間からビンビンと伝わってくる。 インテリアデザインのコンセプトは「ワインセラー。」2002年、2005年と2度に渡りジェームス・ビアード・アワードにて、レストランデザイン賞を受賞しているトーマス氏が手がけた。印象的なトンネルのように曲線を描いた天井の下を歩いていると、ワインセラーの奥底に吸い込まれていくかのように感じる。
店内の席数は100席で、その中に様々なバリエーションを与えている。「コミューナル・テーブル」と呼ばれるセクションは、高さのあるテーブルと椅子が用意され、予約なし、1人、またはカップル客をもてなす。その他にも2人用のテーブルとグループ対応のブースがあり、ゆったり座るというよりは、同席者の間で親密感が感じられる距離を大切にしている。14席用意されているのが「TASTING TABLE IN THE ROUND/テイスティング・テーブル・イン・ザ・ラウンド」とよばれる円形のテーブル。アルファベットの「C」の形をしたそのテーブルの内側からは、ソムリエが客の正面からおすすめのワインをサーブしてくれる。使用されている木目調のテーブルとイスは、このセクションに暖かみを与えている。地下にはる20名用、30名用、70名用の3つプライベートルームを設置。それらの入り口のドアにはワイン樽を作るオーク材を使用するこだわりを見せている。
ワインセラーをコンセプトにしたレストランで堪能するワインは、バーガンディー(ブルゴーニュ)地方とローヌ地方の厳選されたワインが中心となっている。これらのワインは、ダニエル氏、また、ワインディレクターのダニエル・ジョーンズ氏が最も好むワインだとか。その他、バーガンディーやローヌと同系のカリフォルニア、オレゴン、ニュージーランド、オーストラリア、チリなど世界各国からのワインもセレクションに加えられている。そして、これらのワインに最も合う料理がメニューに並ぶ。
季節ごとにメニューが変わるコンテンポラリーなフレンチ・ビストロ料理に加え、「CHARCUTERIE(シャルキトリー)」と呼ばれる、豚肉を使った手作りのテリーヌ、ソーセージ等がレストランの目玉。ダニエル氏がパリで、シャルキトリエ(シャルキトリー職人)のジウ・ベロ氏に初めて出会った時、彼の作る数々のシャルキトリーの味に感動。いつかジウ氏の味をニューヨークでも紹介したいというダニエル氏の想いと「バー・ブリュー」のコンセプトがぴったりとマッチした。
ジウ氏のもとで5年間修行を積んだシェフ、シルバン・ガスドン氏がニューヨークに送り込まれ、ジウ氏の味を正確に再現している。寿司バーを思わせるシシャルキトリー・バーには、テリーヌやソーセージなどが陳列、販売もされている。レストランの味を家庭で気軽に楽しむこともできる。
流石の一言に尽きるダニエル氏のブランド力で、バー・ブリューは開店直後から大盛況だ。
スタッフの料理やワインに関する知識の高さは勿論の事、最高のホスピタリティーで客を迎える。又、彼らの笑顔の中には、ダニエルファミリーの一員という誇りが感じられる。「今度はどう驚かせてくれるのだろう?」という好奇心からだろうか、ダニエルファンのメニューを見る顔は期待で満ちあふれている。カジュアルからハイエンドまで、ニューヨークで最高のフレンチ体験を実現させたダニエルだからこそ可能にできるこだわりが詰まった注目のレストランだ。
Bar Boulud |
幅は狭く縦長の店内。オープンしたばかりだが連日大勢のダニエルファンが訪れる。
シェフお気に入りの赤ワインをナプキンに浸したものが、壁のアートとなっている。
メニュー、プレゼンテーションはカジュアルだけれども「ダニエル」の質は変わりない。