世界的に有名なフレンチの巨匠、ジョエル・ロブション氏が、東京を皮切りにラスベガス、ニューヨーク、ロンドン、そして香港に展開するフレンチレストラン、「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」。ニューヨークの高級ホテルの一つ、フォー・シーズンズ・ホテルの中にニューヨーク店が2006年の秋にオープンした。その厨房に立つのは、ロブション氏の愛弟子、須賀洋介氏。
須賀氏は、名古屋出身。実家は洋食屋、フレンチレストランを経営。末っ子の彼は、仕事で忙しいご両親についてレストランを回り、スタッフに見守られながら、業界の裏側を見て育った。進学校に通ったものの大学進学は考えず、将来はシェフになること漠然と考え始めた。卒業後はフランスのリヨンに語学留学をし、5ヶ月間語学の習得に明け暮れた。
帰国後、東京のフランス料理レストランで修行を始め、実家のフレンチレストラン「シャ・コーベ」を手伝う。リノベーションの為に店を数ヶ月閉店することになり、その機会を利用して数年ぶりに再度フランスを訪れることを決めた。その際、ロブション氏と親しい人物と出会い、その紹介でロブションのもとで働けるチャンスを得ることができた。初期はレストラン経営ではなく、テレビ番組の出演、世界中の食のイベントへの参加、食品会社へのコンサルティングに従事していた。「ロブション氏からの料理の支持はあまりなく、手取り足取り教えてくれるというタイプでもなかった」と語る須賀氏。だが、ロブションと最も近い距離で仕事ができるという特権を活かし、必死で色々な事を吸収した。
2003年には「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」の第1号店が東京、六本木ヒルズにオープンすることになり、ロブション氏の指名により、若干26歳でエグゼクティブ・シェフに抜擢された。この運命に驚く暇も与えさせないまま、オープン前後は多忙な日々が続き、気がつくと3年の月日が経っていた。「その当時は、なんで私のような若いシェフにチャンスを与えてくれたのか分りませんでした。でも今思い起こせば、がむしゃらに自分の全てを(レストランに)投入できる、若さのある人材がロブション氏は必要と考えられていたのだと思います。自分がもし今、ロブション氏の立場であるのなら、モチベーションの高い、若い人にチャンスを与えたいと思いますからね。」と須賀氏は語る。
当初、東京の後は、ロンドン店に携わる予定だったが、ニューヨーク、フォー・シーズンズ・ホテルのワーナー社長の強い希望もあり、ニューヨーク行きが決まった。もともと興味があった新天地でのスタートとなった。ニューヨークに来て気がついたことは、スタッフのモチベーションが高く、ハングリー精神があること。また、フランスや日本にくらべて、食の発展の可能性が一層感じられる土地だということ。料理の味だけではなく、ユニークで創造性豊かなコンセプトを持ったレストランが多いこの街に、須賀氏も興味が深いという。ニューヨークでの経験と培った感性が活かされた彼の今後の活躍に世界中が注目をしている。
(これからニューヨークでチャレンジしたい料理人へのメッセージ)
「日本の技術はとても高いので、料理に関して言えば、しっかり日本で学んでくれば、こちらにきてから、本当に役立つと思います。あと、キッチンでのコミュニケーションはとても重要。それらがスムーズにできる語学力も付けられることをお勧めします。」
L’Atelier de Joel Robuchon |
カウンター席はまるで寿司バーのよう
エネルギー溢れるスタッフとキッチンで共演
今迄後ろを振り返る暇もなく、全力疾走してきたと語る須賀氏