「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」とは、2年に1度、フランスのリヨンで開催される食のコンペティション。世界中からシェフが一堂に会し世界一の座をかけてしのぎを削り合う、食のワールドカップというにふさわしいイベントだ。その2011年の本戦に向けて、アメリカ代表チームを決定する決勝戦が2月6日にニューヨークで開催された。
このイベントを立ち上げたのは、フランスの有名シェフ、ポール・ボキューズ氏。人並みならぬ努力を要するシェフの鍛錬と技術をより多くの一般大衆に知ってもらいたいという想いから開催することになった。この大会では、与えられたテーマ食材(肉・魚)に3種類付け合わせを添えて、5時間半で2種類のメインをそれぞれ14名分ずつ用意する。1000人を超える観衆の目の前で白熱した食の対決が行なわれる。
今までもアメリカ代表チームはボキューズ・ドール国際料理コンクールに参加していたが、確立されたサポート機関もなく、認知度も低かった。しかし、2008年、ニューヨークのフレンチの巨匠、ダニエル・ブリュー氏に、ポール・ボキューズ氏から直々に、アメリカチームの強化委員会の指揮を取ってくれないかとの依頼があった。リオン出身のダニエル氏は故郷の食、そしてアメリカの食の発展の為にこの大役を引き受けた。またダニエル氏に賛同するアメリカの著名シェフ達も強い協力の姿勢を見せた。カリフォルニアのフレンチの巨匠、「フレンチ・ランドリー」のトーマス・ケラー氏、そしてポール・ボキューズ氏のご子息ジェームス・ボキューズ氏もアメリカチームの優勝を目指し立ち上がり、「ボキューズ・ドールUSA財団」を設立した。新体制が築かれて2度目の参加となる2011年の本戦に向けて、アメリカ代表チームを決定する決勝戦が2月6日にニューヨークで開催された。
CIA内のレクリレーションセンターに設営された特設会場には巨大スクリーンが2台設置された。
アメリカの食番組「トップシェフ・マスターズ」などでおなじみのケリー・チョイがイベントの進行役を勤めた。
今年の決勝の会場となったのは、アメリカの料理の名門大学である「The Culinary Institute of America/カルナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ」。 在学生3000人の同校は、学士学位、準学位を取得できるコースがある。 アメリカで活躍する有名シェフの多くがここで料理の基礎を学び、今まで4万人の卒業生を世に送り出した 。アメリカの食業界の将来を担う人材を創り出す教育機関。このイベントの決勝線を開催するにふさわしい場所だ。
今回のイベントのために同校のレクリレーションセンターに特設会場が作られ、本戦と同じ調理器具がキッチンに用意された。キッチンに背を向けて真っ白なシェフジャケットに身を纏った審査員がずらりと並ぶ。審査員席に面して観客席が作られ、各チームの応援団が座る。サポーター達は料理をする姿を見守り、励ましの声援を送る。真剣勝負のエネルギーが会場に溢れる。参加シェフは、今回の規定食材であるラム肉とスコティッシュ・サーモンをメイン料理に使い、それぞれに3種類の付け合わせを添えることが決められている。全ての料理を5時間半の間に完成させなくてはならない。トレイに盛りつけられた料理は、まずゆっくりと審査員の前を通り、全審査員がプレゼンテーションを確認する。その後、料理は小皿に取り分けられ、各審査員によって味の審査が行われる。料理の評価は合計60点。 40点は味に、そして20点はプレゼンテーションにつけられる。
長時間に渡る決勝戦を勝ち抜き、アメリカ代表に選ばれたのは、ユニオン・スクエア・ホスピタリティー・グループのレストラン、「Eleven Madison Park」のスーシェフ、ジェームス・ケント氏。「アメリカ代表に選ばれたのは、この大会の始まりでしかありません。これから、リヨンに向けてトレーニングに精進しなくてはいけません。でも、これだけ強力なボキューズ・ドールUSA財団の支援があるので本戦でよい結果が出せる自信があります!」
1位のジェームス氏には、賞金の5000ドルが授与され、これから2011年のリヨンに向けて、1年を通じて強化トレーニングが開始される。ヨーロッパ勢が上位を締めるボキューズ・ドール。食の歴史の若い国ではあるが、伝統にとらわれない斬新なアイデアや創造力が強みであるアメリカ。多国籍料理が共存するニューヨークのシェフが代表に選ばれたということもあり、2011年のアメリカチームの健闘が期待されるところだ。
用意された料理を試食、採点する審査員のシェフ達。
アメリカ代表に選ばれたジェームス・ケント氏。
Eleven Madison Park